今年も無事に5月ワークショップおよび12月全国大会の開催、ならびに学会誌『ヘミングウェイ研究』第24号も発行できました。これもひとえにみなさまのおかげと心より御礼申し上げます。

☆5月ワークショップ「“The Short Happy Life of Francis Macomber”を読む――交錯する視線」@関東学院大学横浜・関内キャンパス ご報告

結末の意味をめぐって(ばかり)議論されてきたこの有名な中編に、日本ヘミングウェイ協会が誇る中堅の研究者が多角的にアプローチ。刺激的なワークショップとなりました。(司会・講師 戸田慧、講師:長尾晋宏、横山晃、西光希翔)

夜は念願の横浜・中華街で。二部屋に渡って並んだ円卓をにぎやかに囲み、絶品中華料理を楽しみながら語り合いました。来年もここで!という多くの声も(^^;)

 

☆12月全国大会@杏林大学井の頭キャンパス ご報告

ぎっしり詰まった盛りだくさんの2日間でした。多彩なプログラムを企画してくださった大会運営委員の皆様、いつもながら本当にありがとうございました。

昨年始動したジャーナル・ワークショップは来年100周年を迎えるTransatlantic Review(司会・講師 小笠原亜衣、講師:真鍋晶子、渡邉俊)。パリ・モダニズムの極致であるこの絢爛な芸術遺産を、各講師が興奮の面持ちで発表しました。

講演では第3代会長・島村法夫先生にご登壇いただきました。日本のヘミングウェイ研究黎明期の貴重なお話から押さえるべき研究書、近刊『老人と海』ご翻訳にいたるまで、時空を駆け巡る壮大なお話をいただきました。

続くシンポジウムは「ヘミングウェイで/を教える」。大学で文学作品を教える機会が激減した現在、ヘミングウェイを教える意味、英語教材として使う意義、具体的方法や実際の授業報告等をお話いただきました(司会・講師 倉林秀男、講師:大森昭生、越前敏弥、フェアバンクス香織)。会員の多くが英語を教える英語教員でもあることから、現実と地続きの議論に会場の空気がぴんと張り詰めました。今回は『ダ・ヴィンチ・コード』のご翻訳等で有名な翻訳家の越前敏弥さんにもご登壇いただき、翻訳の営みから作品解釈を切り拓く豊かな実践をフロアと共有いただきました。

2日目は大学院生から中堅まで、真摯に研究に取り組まれている皆様の研究発表となりました。栗山裕也氏と内田水生氏は同じ短編”The Undefeated”をとりあげ、それぞれキリスト教あるいはキュビズム絵画との関連で論じられました。久保公人氏は脳科学の知見を参照し、ヘミングウェイにとっての執筆を「筆記療法」の側面から考察されました。いずれも大変独創的な内容で、論文にされることが待たれます。

途上の研究をフロアに問う「ワーク・イン・プログレス」では大学院生の岡田虎之輔氏が修士論文の延長となるご研究の方向性についてご発表され、聴衆からの質問やアイデアが途切れることなく提起されました。

盛りだくさんですでに頭がぱんぱんだった一日目の夜。吉祥寺のビアホールで乾杯し、校務等で1日目参加が適わなかった会員も駆けつけ、30名弱でワイワイとさながら忘年会の様相でおしゃべりの花が咲きました。それでもほとんどの会員がきちんと時間通りに集まった2日目、祝祭的な1日目とはまた違う、作品と向き合う皆さんの真剣さで満ちた濃厚な1日でした。

 

2024年の5月ワークショップは単独開催です(@名城大学)。開催校委員の柳沢さんが「中華街に負けない」場所を鋭意準備中とのことです(^^)

名古屋でお目にかかれることを楽しみにしております。

本年も大変お世話になりました。

よいお年をお迎えください。

日本ヘミングウェイ協会会長 小笠原亜衣