日本ヘミングウェイ協会2016年5月ワークショップ
2016年5月28日(土)10時〜12時30分
京都大学吉田キャンパス(〒606-8501 京都市左京区吉田本町)
吉田南総合館西棟1階 共西11講義室
28日18時頃から会場近辺で懇親会(会費5000円前後)を予定しておりますので、ふるってご参加ください。懇親会への参加については事務局(hemingwayjapan@yahoo.co.jp)までメールでお申し込みください。
締め切りは5月10日(火)です。
※NL70号で5月10日(金)と記載してしまいました。10日(火)の誤りです。お詫びして訂正いたします。
-----プログラム-----
■タイトル
“The Last Good Country”再考―50年代のニックとヘミングウェイ
■メンバー
司会・講師:フェアバンクス香織(文京学院大学)
講師:田村恵理(石川県立大学)
日下幸織(九州大学、院)
渡邉藍衣(東京女子大学、院)
■概要
“The Last Good Country” は1952年、『老人と海』の出版と同じ年に執筆が開始され、亡くなる3年前の58年まで断続的に執筆されたヘミングウェイ晩年の作である。彼の死後、フィリップ・ヤング編のThe Nick Adams Stories(1972)で初めて公となった当作品は、その後もThe Complete Short Stories of Ernest Hemingway: The Finca Vigía Edition(1987)およびThe Collected Stories(1995)の二度にわたって再掲された。約20年の時を経て突如復活した「ニック・アダムズ物語」——。16歳の時に起きた「アオサギ事件」を下敷きにしたこの中編小説は、近年、ニックとリトレスにみられる兄妹の近親姦的な関係やリトレスの男の子への変身願望など、ジェンダー/セクシュアリティの射程から徐々に読み解かれるようになってきた。しかし、ニック・アダムズ物語群の中でも特異な位置を占め、かつ『エデンの園』との関連性も強い当作品は、より広い視点から議論できる可能性を秘めている。
本シンポジウムでは、従来の先行研究ではほとんど着目されてこなかったキーワードを軸に、4名の発表者が “The Last Good Country” の再考を試みる。まず田村と日下は、当作品における家族の存在/不在に着目。 “Fathers and Sons”(1933)などの考察を交えながら、田村は “The Last Good Country” の存在意義をニック・アダムズ物語群における息子と妹の位置の接続性から見いだし、日下は “The Last Good Country” におけるヘミングウェイと「父」との関係に迫る。また渡邉とフェアバンクスは、当作品がヘミングウェイの晩年に書かれた唯一の「ニックもの」である点に注目。渡邉は晩年のヘミングウェイのミシガン(の森)への眼差しを、初期作品との比較や宗教と絡めて探り、フェアバンクスはヘミングウェイが残そうとした“晩年の「ニック」”を、同時期に執筆された『エデンの園』のニックとの関連性や「作家(小説)vs.画家(絵画)」の構図のなかで捉え直す。
なお、本シンポジウムではThe Collected Storiesのテクストを使用する。