ニューズレターでお知らせしましたとおり、本年度も日本英文学会全国大会にあわせてワークショップを開催いたします。
これまでまとまって論じられることのなかった作品への刺激的なアプローチです。
みなさまのご参加をお待ちしております!
日時:2025年5月31日(土)10:00〜
場所: 東京大学本郷キャンパス 法文1号館315教室
短編ワークショップ「“Black Ass at the Cross Road”を読む:作品の背景に潜むもの」
司会・講師:中村嘉雄(九州大学)
講師:森田 司(福岡大学)
講師:若松正晃(四天王寺大学)
講師:中山悟視(尚絅学院大学)
WS内容要旨
この作品の副題は「謎」こそ相応しい。第二次世界大戦、ヘミングウェイはこれまでのどの戦争にも劣らず(むしろそれ以上に)連合国軍とともにフランス解放に尽力した。1944年6月6日ノルマンディー上陸作戦、D-Dayのオマハビーチ(連合国側のコードネーム)、彼は30人に一人しか上陸できない浜辺の弾丸の只中悲惨極まる光景を直に目にした。それはレイノルズのいうような「特派員専用の輸送船」(“correspondent Transport”)(ベイカーでは「上陸輸送船」(“Attack Transport”) である) から派遣記者が「眺める」(“view”)安楽なものではなかった。
だがそこにストーンバックも認める「ヘミングウェイ研究の中心となる難問の一つ」 (107)がある。フランスに上陸後、「ラナム大佐指揮下の第二十二連隊と行動を共にし、 労働者や農民からなるパルチザン(非正規軍)を指揮してランブリエ近郊の戦闘師団司令所でドイツ兵捕虜の尋問を手伝い、退却するドイツ軍の情報を得るのに腐心し」(田村, 166)、戦闘にまで参加したヘミングウェイは「この戦争を題材にした作品の数々の偉大なプラン」があるにもかかわらず「書かなかった」(ストーンバック、107)のである。そして唯一とも呼べる作品が生前出版を認めなかったこの作品である。
「謎」は尽きない。では「なぜ書かなかったのか」、逆に、「なぜこの作品を書いたの か」、「作品のフランスの田舎の風景の裏に何があるのか」。ワークショップでは4名の講師が「憂鬱」な作品の「謎」とその背景を探る。
(同日夜に懇親会も予定しています)