■日時:2021 年5月29日(土)10時から13時(英文学会の翌週です)

■Zoomによるオンライン開催→当日のZoomミーティングルームのURLは、5月19日に協会のメーリングリストを通じてお知らせしました。

★「キリマンジャロの雪」を読む/読み直す

○司会:高野泰志(九州大学)

○講師:高橋美知子(福岡大学)

○講師:内田水生(西南学院大学・非)

○講師:鈴木智子(獨協大学・非)

「キリマンジャロの雪」を読む/読み直す

「キリマンジャロの雪」がヘミングウェイの短編小説の中でももっともよく知られた作品であることには異論はないだろう。にもかかわらず、これまでのヘミングウェイ研究において、この作品は最初期の批評をのぞけばほとんど論じられてこなかった。論文の数は比較的多いものの、そのほとんどが作家の伝記を作品から再構成しようとする粗雑な伝記研究や冒頭のエピグラフに関するソーススタディなどであり、作品解釈に正面から取り組んだ論文は驚くほど少ないのである。本ワークショップでは、ある意味でもっともよく読まれながら、別の意味ではもっとも読まれてこなかったこの「キリマンジャロの雪」を、多角的な方向から読み込み、新たな解釈の光を当てることを目的としている。フィッツジェラルド研究者である高橋美知子氏は当初作品に明記されていたフィッツジェラルドの名前を取り上げ、従来の伝記研究に修正を迫るとともに、作品に対する新たな解釈を提供する。また内田水生氏は作中に描かれる「麻痺した足」の表象を取り上げ、「痛み」を取り戻そうとするハリーの造形を論じることで、ハリーとヘミングウェイの距離を読み直す。最後に鈴木智子氏は作品のメタフィクショナルな構造に注目し、現実の虚構性を意識させることによって読者の現実認識を揺るがせるヘミングウェイの創作について論じる。ヘミングウェイの伝記と密接に結びつくと言われる「キリマンジャロの雪」に対し、伝記的側面と作品構造の双方から作品に迫りたい。このワークショップをきっかけに、この意外にも見過ごされてきた「キリマンジャロの雪」に新たな批評的関心が向けられることを期待している。